日本スポーツの現在地 第2部③
袋に入った重さ20キロの牛ふんを、ゴールキーパー(GK)2人が運んでいた。
アスパラガスが植えられているうねに肥料をまき、軍手でならしていく。
福島県喜多方市の市街地から車で約20分。山の中腹にあるアスパラガス畑での作業は続いた。
10人で手分けして、約200袋の肥料を2反の畑にまいた。
GK、というのはサッカーJ3福島ユナイテッドFCに所属する2人の選手。そのうちの1人は「アスパラガス課長」だ。午前中の練習を終えた後、今度は土にまみれながら汗を流した。
これは、クラブで設けた「農業部」の活動の一環だ。この日は2人の他、クラブスタッフ3人の計5人が、本拠地のある福島市から車で約1時間半かけてやってきた。
農業部の取り組みは2014年、東日本大震災による原発事故の影響で、売れ行きが落ちた福島の農業の手助けになればと始まった。はじめはりんごの苗木のオーナーとして、農作業をするようになった。
今では各地域の農家と連携し、アスパラガスとりんご以外に、梨、桃、米、ぶどうの計6種類を育てている。農家との間には金銭的なやり取りはない。協力をお願いして選手やスタッフが様々な作業に取り組む。
クラブでは各作物の「担当課長」に、選手を任命している。
クラブ在籍2年目のアスパラガス課長、GK大杉啓(26)は言う。
「僕たちがどこからお金をいただいているかと考えたら、地域の人たちの支えがあってこそ。農作業はサッカーのプラスアルファではなくて、やって当たり前、という感覚」
とはいえ、この立場になる前は、ここまでやるとは想像していなかった。実際に作業をしてみてクラブの「本気度」にはびっくりしたという。
「収穫のお手伝い、というくらいなのかなと思っていたけど全然違った」
この日の作業もそうだった…
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