「ラ・カンパネラ」の高速連打を可能に 革命的ピアノが見せる景色
古楽とモダンの双方で、ピアノという楽器の表現を開拓し続ける飯野明日香が、19世紀のエラール製フォルテピアノで古今の楽曲を弾くリサイタル「エラールという楽器」を20日、東京・赤坂のサントリーホールブルーローズで開く。4年前に始めた、エラールに焦点を当てる3回にわたるシリーズ企画の、これが集大成となる。
東京芸大ピアノ科を経て、パリ国立高等音楽院でフォルテピアノに開眼。古楽の本場ベルギーでさらに研鑽(けんさん)を積んだ。
欧州では、年代や地域によって様式の異なる様々な楽器に日常的に触れることができた。遊びながらいろんな楽器を弾くうちに、「これまでよく知っていたはずの曲たちが、知らなかった表情をどんどん見せてくれるようになった」。
ペダルの指示も、現代のピアノではただ濁るだけになりがちだが、当時のピアノでやると多様な和声が共鳴し合い、全く異なる味わいを醸し出すことに気付いた。作曲家が何を「美しい」と思っていたかを追体験することができるのだ。
楽器が調度品の役割を兼ねていたかつてのフォルテピアノに比べ、大量生産を前提とした近代以降のグランドピアノでは、見た目においても音色においても差異の豊かさを味わうのはなかなか難しい。「ちょっとした違いに気付く日々のゆとりとか豊かさみたいなものを、古楽器は思い出させてくれる」。演奏者と作曲者の「真剣勝負」に、楽器というファクターを加えたら、もっと軽やかに、もっと多様に、楽曲とふたたび出会えるのではないか――。そんな問題提起をしてみたくなった。
エラール社が創業した18世…