銭湯経営はコスパ悪い?戦後唯一、今も料金しばる「物価統制」の功罪

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宮島昌英
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 燃料費の高騰に、街の銭湯が苦しんでいる。兵庫県では今年、銭湯料金を40円値上げし、神戸市は値上げ分を補塡(ほてん)する支援策を始めた。銭湯の料金をめぐっては終戦直後から全国に「特殊ルール」が残っており、コスト増になっても料金に転嫁しにくい実情がある。

 《ずっといい湯加減 これからも同じ値段で》

 神戸市のウェブサイトのトップページには今、こんな文字が表示される。

 これまで450円だった銭湯の料金を、県が2月に490円に値上げしたことを受け、神戸市内では引き続き450円で入浴できることをうたう。差額の40円分を市が銭湯へ補塡する。

 2月の市長会見では、物価高騰であらゆる業界・施設が影響を受ける中で、銭湯の支援に特化する理由を問う質問が出た。

 久元喜造市長は、健康増進や高齢者のふれあいの場としての役割などを挙げ「コロナ、物価騰貴、そして格差の拡大の中で銭湯の社会的必要性が大きくなっている」と理解を求めた。

77年前から、銭湯だけ対象続く

 充実した設備や規模を持つスーパー銭湯と異なり、一般の銭湯は運営者が料金を自由に設定できない。

 理由は、国の物価統制令だ。終戦後のインフレ対策で1946年に出された。

 その後の物価安定で対象品目が次々と外される中、今も銭湯だけが対象に残り、都道府県知事が上限価格を決めている。例えば東京都は500円、大阪府は490円、福岡県は480円だ。

 統制が続く理由について厚生労働省生活衛生課は「地域住民の日常生活や、保健衛生上の観点から必要」と説明する。

 兵庫県生活衛生課も「日常的に使ってもらえる価格設定であるべき」だとして、大幅な引き上げには慎重な姿勢を示す。

 神戸市兵庫区の銭湯「芦原温泉」の番頭、安田孝さん(54)は「昔はそこら中に銭湯があったので、(統制令のおかげで)価格競争にならずに良かった面もあった」と振り返る。

 しかし家庭の浴室の普及とともに銭湯の数も利用者も減少。そこに新型コロナや燃料費の高騰が追い打ちをかけた。「コストに見合っていないのに、価格を決められないもどかしさを感じる。『コスパ最悪』な商売になっている」と嘆く。

ふくらむ光熱費、脱ガスの動きも

 芦原温泉の場合、2020年…

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