東京サントリーサンゴリアスの「14人」 執念で紡いだラストプレー

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松本龍三郎
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 ラグビー・リーグワン プレーオフ準決勝(東京・秩父宮) 東京ベイ24―18東京SG

 時計は、後半45分をまわっていた。

 6点を追う東京SG(旧サントリー)は、絶好の得点チャンスを迎える。

 14日、ラグビー・リーグワンのプレーオフ準決勝、東京SG―東京ベイ(旧クボタ)戦。すでに、ラストプレーを告げるホーンは鳴っていた。

 敵陣左5メートルラインからのラインアウト。ボールの確保に成功した東京SGがモールを押し込む。最後尾のフッカー中村駿太は、大事そうに楕円(だえん)球をかかえた。

 一歩ずつゴールラインに近づき、倒れ込むように両軍入り乱れてインゴールへなだれ込んだ。

 トライか――。

 審判の滑川剛人が、もみくちゃになった選手たちの中に、隠れた球を追う。しかし目視では確認できない。勝負の行方は、TMO(映像判定)にゆだねられた。

 決勝をかけた大一番は、序盤から波乱の展開だった。前半5分、東京SGのFWツイヘンドリックが危険なタックルで退場処分。残り時間を、14人で戦わなければならなくなった。

 一方的なスコアになっても不思議ではないが、東京SGは執念で接戦に持ち込む。

 強力な外国出身FWを擁する東京ベイから、前半は1トライをもぎ取り、3点リードで折り返した。後半、圧力を増してきた相手FW陣に押し込まれる場面もあったが、空いたスペースをうまく突き、持ち前の「アタッキングラグビー」で何度も防御線を破った。

 後半37分の失トライなどで、この日最大の11点ビハインドを負う。それでも諦める選手は1人もいない。

 後半39分をまわったところで、SOアーロン・クルーデンがトライを奪い、5点をかえす。40分までに残された時間はわずか。トライを決めたクルーデンが、大急ぎでゴールキックを蹴り込んだ。

 得点にこそならなかったが、この数秒が、「ラストワンプレー」を生むか生まないかの分かれ目だった。かくして、東京SG「最後の猛攻」につながった。

 冒頭の場面に戻る。

 プレーを捉えた映像が会場に流れた。両軍の選手が重なり、ボールの位置が確認できるシーンはわずか。地面につけたと思われる瞬間は、ボールともスパイクとも区別がつかない模様が見えるだけだった。

 モールのなかで、ボールのすぐそばにいた東京SGのSH流大は確信していた。「正直な話、僕の真横でグラウンディングはしてるんです」。でも、「レフェリーからも見えないし、アシスタントレフェリーからも見えないし、カメラにも映っていなかった」。

 判定が決するまで、5分以上の時間を要した。それだけ、判断が難しかったということだろう。TMOを宣告してから約6分後、ノートライの判定とともに試合終了の笛が吹かれた。

流は言った。「14人のなかでは最高のゲーム」

 「レフェリー陣の判断が全て…

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