14日投開票のタイ下院(定数500)の総選挙では、野党勢力が獲得議席の数を増やす勢いだ。特に都市部では、選挙前に野党第2党だった前進党が大きく勢力を伸ばす情勢になっている。首都バンコクの投票所で尋ねると、この20年の間に繰り返されてきたクーデターや政治対立に疲れた有権者たちから、新たな風を求める声が聞かれた。
「軍と政治は距離を置くべきです」。14日午前、バンコク中心部の投票所で投票を終えた自営業のニリンラダ・ノンサイスワンさん(43)は言った。「これまでの政治が注目してこなかったことを議題に上げてきたことを評価した」として、前進党に票を投じたという。
前進党は、不敬罪改正や徴兵制の廃止など、タイではタブー視されることもある政策を公約に掲げた。これが守旧派の打破というイメージにつながっているようだ。
同じく前進党に投票した会社員のタカーン・ハナフィさん(25)は、有権者との対話のあり方を評価していると言った。「前進党の説明はデータを重視していて説得力があります。権力を手にしたいというよりも政策の実現をめざしていると感じます」
前進党のピタ党首は42歳。米ハーバード大ケネディ・スクール(行政大学院)やマサチューセッツ工科大のビジネススクールを経てIT企業で働くなど華麗な経歴の持ち主だ。選挙戦に入って清新なイメージと分かりやすい演説で人気を集め、首相候補としてはトップの支持率を誇る存在になった。
「タクシン対軍」の構図、もう見たくない
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