日本一長寿の川崎市麻生区、秘密を聞くと?「坂が多い」だけじゃない
【神奈川】厚生労働省が発表した2020年の平均寿命で、川崎市麻生区が全国の市区町村で、男女とも最も長寿だった。多摩丘陵の里山が連なる坂道の多い街で、住民は「足腰が鍛えられて健康な人が多いのかも」と推測する。
5年に1度の調査で、麻生区は男性84・0歳、女性89・2歳で、ともに1位となった。15年の前回調査では男性83・1歳(2位)、女性88・6歳(4位)だったが、ともに延びた。
長寿1位の発表に、高齢者福祉などを担当する川崎市麻生区地域ケア推進課の藤原亮子課長は「はっきりした理由はわからないが、高齢者が住みやすい地域づくり、つながりづくりを進めてきた。健康に気をつけている区民は多い。とてもうれしい結果です」と話す。
市が昨秋に実施した高齢者実態調査(65歳以上対象)でも、麻生区民の健康意識は高い傾向がみられたという。同市7区のうち、がん検診を定期的に受診している割合は34・9%で、宮前区の35・7%に次ぐ高さ。「15分くらい続けて歩いていますか」の問いでは、最も高い88・2%が「できるし、している」と回答した。
麻生区は「しんゆり」の愛称で親しまれる小田急線新百合ケ丘駅周辺などを中心にファミリー層に人気が高い。1969年から麻生区王禅寺地区に住む前川澄雄さん(85)は地域活動に積極的に関わり、地域教育会議の地域教育コーディネーターも務めている。「麻生区は丘陵地帯を開発して発展した街。どこにいっても坂道ばかり。駅にいくだけで足腰が鍛えられる。自然豊かでよい環境です」
一方で、川崎区は全国1887市区町村のうち、男性が78・8歳(1871位)、女性が87・0歳(1578位)と、ともに県内で最下位だった。横浜市でも上位の区がある一方、中区(男性1834位、女性1071位)や南区(男性1377位、女性1227位)のように下位の区もある。
元横浜市職員の加藤彰彦沖縄大名誉教授(社会福祉)は「寂しいことだが、これまで以上に経済格差が健康格差として現れてきたのだろう。都市部は様々な人が住んでいる。経済的、精神的に安定しているからこそ、食事や健康にも気を配れる。厳しい環境に置かれ、日々の生活を送ることに精いっぱいの人は多い」と指摘する。(佐藤善一)
平均寿命上位の県内市区町村
【男】
①川崎市麻生区 84.0歳
②横浜市青葉区 83.9歳
⑥鎌倉市 83.3歳
⑧横浜市都筑区 83.3歳
(28)横浜市金沢区 83.1歳
(30)横浜市港北区 83.1歳
(40)逗子市 83.0歳
(42)横浜市栄区 83.0歳
(47)藤沢市 83.0歳
(50)横浜市戸塚区 83.0歳
90茅ケ崎市 82.7歳
97横浜市緑区 82.7歳
127横浜市泉区 82.6歳
【女】
①川崎市麻生区 89.2歳
⑬横浜市青葉区 88.8歳
⑯横浜市都筑区 88.7歳
(25)川崎市高津区 88.6歳
60川崎市宮前区 88.5歳
69横浜市戸塚区 88.5歳
101茅ケ崎市 88.4歳
103横浜市金沢区 88.4歳
119横浜市栄区 88.4歳
128川崎市多摩区 88.4歳
136横浜市港北区 88.4歳
155鎌倉市 88.3歳
202逗子市 88.3歳
※丸数字は全国1887市区町村の順位
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