台湾総統選、2大政党の候補者出そろう 蔡英文氏の後継選ぶ選挙戦へ

台北=石田耕一郎
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 来年1月にある台湾総統選に向け、17日に主要政党の候補者が出そろった。最大野党で中国に融和的な国民党などが公認候補を発表した。親米路線で中国と距離を置く民進党・蔡英文(ツァイインウェン)総統の後継を選ぶ選挙で、政権交代となると台湾と日米欧との協力にも影響が出る可能性があり、野党の共闘が今後の焦点となる。

 国民党は警察官僚出身の侯友宜(ホウユーイー)・新北市長(65)を公認候補とした。与党の民進党は、党主席(党首)の頼清徳(ライチントー)副総統(63)を4月に公認決定している。ほかに第3勢力の台湾民衆党も同日、主席の柯文哲(コーウェンチョー)・前台北市長(63)の公認を決めた。

 シンクタンク「台湾民意基金会」の5月の世論調査によると、3人の支持率は頼氏(35・8%)が、侯氏(27・6%)と柯氏(25・1%)をリードする。

 このため、国民党は民衆党に、野党統一候補の実現を呼びかける方針だ。柯氏は、総統選での政党間協力の可能性を排除しないと語っており、今後、自らの立候補を取り下げて侯氏と連携するかが注目される。

 台湾総統の任期は1期4年で連続2期まで。2000年以降は、2大政党の民進党と国民党が8年ずつ、交互に政権を担ってきた。

 2016年に誕生した蔡政権は、中国が対話の条件とする「中台は『一つの中国』に属する」という考え方を拒み、日米欧との関係強化を図ることで、中台の現状維持をめざしてきた。

 これに対し、中国は近年、台湾の防空識別圏(ADIZ)に頻繁に軍用機を進入させたり、台湾産食品の輸入を規制したりする圧力を強化。台湾が外交関係を維持する国々への働きかけを強め、この7年で新たに9カ国と国交を結び、台湾と断交させた。

 台湾内外で「有事」への懸念が高まるなか、各党の対中政策は次期総統選でも大きな争点だ。国民党が政権交代を果たした場合、中台交流の拡大が想定され、台湾と日米欧との経済安全保障をめぐる協力などに影響が出る可能性もある。

 頼氏は「『台湾』は事実上、すでに独立した国で、中台はともに隷属しない」と主張。蔡政権の路線継承を明言し、「一つの中国」を認めない立場をとる。

 侯氏も台湾を「独立国」と表現し、中国が台湾統一後の統治システムとして掲げる「一国二制度」に反対する。一方で「一つの中国」への態度は明らかにしておらず、中国や親中派支持層への配慮が透ける。(台北=石田耕一郎)

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