大学の実験装置が故障→芋焼酎とビールに 偶然が生んだ香り、形に
杉浦奈実
実験装置の故障をきっかけに生まれた酵母が焼酎、そして今度はビールに――。基礎研究に使われるはずだった熊本大学理学部発の酵母が、活躍の場を広げている。
はじめは偶然だった。細胞の中で重要な役割を果たす「RNA」の研究のために培養していた酵母の実験装置が、故障して止まっていた。熊本大学理学部教授(当時。現在は放送大学熊本学習センター所長)の谷時雄さん(65)が、酵母が入った容器のふたを取ると、「飲みたい」と感じるほどの香りがあった。
この酵母から酒ができるのではないか。谷さんは普段の業務の傍ら、6年ほどかけてよい香りの成分をたくさん作る株を選び出し、昨春、オリジナルの芋焼酎に結実させた。
使った酵母は「シゾサッカロ…