第4回「親の手伝いが前提」でいいのか 学校の宿題、家庭環境で生じる格差
宿題が終わらない (4)
宿題が終わらない――。そんな子どもたちの中には、家庭環境などから、宿題に取り組むのが難しい子もいます。とりわけ小学生では、親の関与が前提の宿題だと子どもが不利益を被ることもあります。あるべき宿題の形とは? 大人たちができることは、どんなことでしょうか。
仕事で夜遅く帰ってきた、ダブルワークのひとり親。子どもの食事を用意して寝かしつけるので精いっぱい。とても子どもの宿題の「丸付け」と「間違い直し」に割ける時間はない。家が狭く、宿題をするスペースもない。翌朝、学校に行った子どもは、また宿題を忘れたと先生に注意される――。
スクールソーシャルワーカーの経験がある岩手県立大の桜幸恵(ゆきえ)教授は、宿題をめぐり、そんな親子の現状に相次いで接した。
気持ちの負債たまる「持ち帰り残業」
学校で出る宿題は、保護者に関わりを求めるものが少なくない。計算ドリルや問題集の丸付けをしたり、間違いを直したり、音読や楽器の練習を聞いたり。
桜さんは「宿題に関わりたくても忙しすぎて関われない。そんな親の状況がわかっているからこそ、子どもも親に言い出せない現状がある」と指摘する。「こうした子どもの気持ちの『負債』がたまっていくと、親子ともに現状へのあきらめにつながっていきかねません」
東京大などの2022年の調査では、小学1~3年生では6割、小学4~6年生では4割、中学生では2割の保護者が学校の宿題を手伝っていた。とりわけ最近の宿題は調べ物学習も多く、家に絵本や図鑑があるか、インターネットが使えるかどうか、保護者が関与できるかどうかで差がついてしまいがちだ、と桜さんは言う。
桜さんは、経済困窮などの課題を抱える世帯の子どもらの学習支援をする一般社団法人「ふたば」の代表理事でもある。小中高生を対象に、大学生や社会人のボランティアとともに宿題のサポートをする「居場所」を定期的に開く。
保護者が宿題を見ることができない子については、「先生にも見る余裕がないのであれば、学童保育や学習支援団体の多様な支援を準備し、まずは『宿題をやってみたい!』と思えるような、放課後の居場所と子どもに寄り添うサポートをするしかない」と言う。その上で、より長期的には、「学校の勉強の『持ち帰り残業』のような形で家庭に宿題を課すやり方は、見直されるべきでは」と言う。
「教員は、宿題を忘れてきていないかどうかという減点主義で子どもを見ずに、一部でもできた部分に目を向けるべきです。提出できなかった時にはその子に何があったか尋ね、子どもの意欲の背景にある環境に目を配る姿勢が必要です」
終わらない宿題の裏には、子ども自身が苦しんでいるケースもある。
京都教育大の丸山啓史准教授は、学童保育に通う子どもや指導員、放課後等デイサービスに通う子の保護者らに聞き取り調査をしている。その中で、宿題に苦労しているケースを相次いで聞いた。
「障害の有無に関わらず、勉強に苦手さのある子どもは、宿題をすごく負担に感じている。宿題をやらなければという強迫観念に押し潰されて心身が苦しくなってしまう子もいる。追い込まないやり方が必要です」
「苦手な子はいつも・・・」
宿題にかかる時間や負担感に…
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