シリア、アラブ世界への復帰なぜ 米国の本音は 日本の取るべき道は
内戦への対応で国際的に孤立していた中東のシリアに対し、地域機構のアラブ連盟が、連盟への復帰を12年ぶりに認め、19日にはサウジアラビアでの首脳会議にシリアのアサド大統領が出席しました。これは何を意味し、今後の国際情勢にどう影響するのでしょうか。公益財団法人中東調査会研究主幹の高尾賢一郎さんに聞きました。
――シリアがアラブ連盟に復帰しました。背景にはどんな事情があるのでしょうか。
まず中東全域の大きなトレンドとして、米国の「中東離れ」があります。米国は、世界戦略の力点をアジアに傾ける「リバランス政策」で、中東から軍事的に撤退しています。その間隙(かんげき)をぬうように、中国、ロシアが進出しています。ロシアが軍事支援するシリアのアサド政権の孤立状態が解消されるというのは、こうした大国の動きと関係しています。
もうひとつ、中東諸国に視点を定めると、顕著なのは、2011年に広まった民主化運動「アラブの春」のあとに続いてきた外交の方法が、変わりつつあることです。敵を孤立させる「封じ込め型」から、警戒の対象でも輪の中に加えてコントロールする「取り込み型」へかじを切っています。
過去10年ほどの中東では、サウジとトルコ、そして「アラブの春」の影響で政治的に不安定化した国々に介入して影響力を強めたイランによる、三つどもえの覇権争いとも呼ばれるような状況が続いていました。
内戦での自国民弾圧により、アラブ連盟から参加資格を停止されていたシリアが、12年ぶりに連盟に復帰しました。今回の動きは、シリアのアサド政権を厳しく非難してきた米国にとっても、そう悪い話ではないといいます。記事の後半では、日本が取るべき道についても言及しています。
ですが、21年以降、サウジはトルコと関係改善を進め、さらに今年3月にはイランとの国交正常化に合意しました。アラブの春の影響で生じた、これまでの地域の緊張を清算するような動きに見えます。
取り込み型の外交 連盟各国の思惑は
――なぜ中東の国々はこのよ…
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