G7首脳、平和記念資料館の滞在は40分間 被爆者「不十分」の声も
被爆地・広島にとって歴史的な日となった。G7サミットが開幕した19日、7カ国の首脳がそろって平和記念資料館を訪れ、原爆死没者慰霊碑に黙禱(もくとう)を捧げた。首脳たちがただの訪問で終わらせることなく、「核兵器のない世界」へ歩みを進めることを被爆者たちは願った。
「歴史的に非常に意義深い日になったのではないか」。松井一実・広島市長は首脳らの案内を終えると、記者団に語った。湯崎英彦知事は訪問実現を「我々のお願いのかなりの部分が実現できた」と話した。
慰霊碑には「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」と刻まれている。松井市長は「こんな思いは他の誰にもさせてはならないという被爆者の訴えへの答え。真の世界平和実現を祈念する広島の心を表している」などと首脳たちに説いたという。
ただ、約40分間の資料館滞在では「不十分」との声も被爆者の間でくすぶる。
広島県原爆被害者団体協議会の箕牧智之(みまきとしゆき)理事長(81)は「資料館をもっとじっくり見てほしかった」と指摘。首脳と対話した被爆者が小倉桂子さん1人にとどまったことについて、もう一つの広島県原爆被害者団体協議会の佐久間邦彦理事長(78)は「できればもっと多くの被爆者の話を聞いてほしい」と話した。
資料館の前館長の志賀賢治さん(70)は、遺品と向き合えば、誰もが原爆で犠牲になった人たちと自身の人生を重ねて「当事者」だと理解する瞬間が生まれるだろうと思っている。「展示を見ることは非常に個人的な行為で、感じることはそれぞれ異なる。ぜひ、次は個別に訪れてほしい」と語った。
訪問の評価は核廃絶への後押しとなるかに移りそうだ。湯崎知事は「この体験をしっかりと踏まえ、核兵器廃絶に向けて世界が進むように議論していただきたい」と記者団に強調。資料館で体験証言を続ける笠岡貞江さん(90)は「慰霊碑や資料館を見て何か感じるものがあったのでは。核兵器のない平和を実現すると自分たちで表現し、政治の上で行動に移してほしい」と語った。(魚住あかり、黒田陸離、興野優平、岡田将平、菅野みゆき)