52カ国歩いた「旅する画家」 独自の画法、岐阜の実家にギャラリー
リュックサックを背負って世界52カ国を歩き、街の風景などを描いてきた「旅する画家」が、岐阜県多治見市の実家に「アトリエ ゾンネ」を開設した。併設するギャラリーで28日までオープン記念の個展を開いている。26日は休館。
画家は静岡市在住の奥村ユズルさん(62)。静岡大学在学中にインドを3カ月間、放浪したのを機に海外旅行にはまり、卒業後も30歳まで、アルバイトで金がたまれば旅に出るバックパッカー生活を続けた。
一方で、大学在学中から障害者の自立運動にかかわり、28~29歳の時に約1年間、英国で福祉ボランティアを経験した。帰国後は障害者の自立を支援する静岡市のNPO法人職員となり、海外には年2回程度、休暇をとって出かけた。
絵を始めたのは、作家で写真家の藤原新也さんのインド放浪記に共感したのがきっかけ。専門的に絵画を学んだことはないが、カンバスに砂を塗り込んだ上にアクリル絵の具を重ねる独自の手法を考え、30代からは、海外の街並みなどを描くようになった。
42歳で東京の丸善日本橋店で本格的な個展を開き、以後も山梨県北杜市やニューヨークなどでほぼ毎年、個展を開いている。作品は明るいタッチを心がけ、福祉への願いを込めて街角のどこかにお年寄りと車いすの人を描くほか、天使と黒ネコが登場する。
多治見市にアトリエ兼ギャラリーを開設したのは、築50年を経た実家の建て替えを機に、故郷に戻ることを決めたからだ。建て替えた実家では母親が一人で暮らし、奥村さんは週末だけ帰郷する2拠点生活だが、数年後にはNPO法人を退職して妻とともに同居し、画業を続けたいという。
「自然豊かで、陶芸を通じて…