新たに数兆円が必要になる子育て支援の財源。消費増税を封印する岸田文雄首相が標的の一つとしたのが、社会保障分野での歳出削減だ。だがコロナ禍や物価高で苦しむ医療や介護の業界からはむしろ歳出増を望む声が出ており、理解を得るのは簡単ではない。財源をめぐり、「子どもVS.高齢者」の構図になりかねない状況となっている。
岸田首相は財源について「徹底した歳出の見直しが大前提」との考え。社会保険料への上乗せも検討するが、ネット上では国民所得に占める税金や社会保険料の割合(国民負担率)が47・5%(2022年度)という現状に「五公五民」との批判が吹き荒れる。早期の解散総選挙も取りざたされる中、「実質賃金がマイナスなのに負担増は厳しい」(閣僚)との声も漏れ、官邸幹部は「歳出改革でかなりをひねり出す」と言う。
首相官邸や財務省が歳出削減で狙うのは、医療や介護などの社会保障分野だ。政府は昨年末に決めた防衛費増額の財源として、5年計画の最終年度である27年度に増税以外で約2・6兆円を捻出する方針だが、このときも社会保障だけは対象から外した。このため、子育て支援の財源は、23年度予算で134兆円の給付費がある社会保障を削減対象と定めた。「医療と介護をどう切るかが大事」(財務省幹部)との声が出る。
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一方、医療や介護業界からは…