第3回発達障害と告げずに入社、配慮はわがまま? 追い込まれた20代女性

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米田悠一郎
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発達障害は「わがまま」? 働く場の合理的配慮

 西日本に住む20代女性の夢は、商品開発に携わる仕事をすることだった。

 女性は小学生のころ、自閉スペクトラム症(ASD)と診断された。

 とくに聴覚過敏がひどかった。窓を開けて部屋にいると、外を歩く人の足音や車の音が頭の中で響き、人混みにいると疲れやすかった。

 就活では、商品開発を担当できるメーカーを中心に回った。障害者雇用枠での応募も考えたが、希望の職種に就ける会社は見つからなかった。

 大学時代、障害のことが友人に不本意に伝わり、一部の人から距離を取られて傷ついた経験もあった。だから「一般枠」でエントリーし、総合職としてあるメーカーに採用された。

 2020年4月に入社し、プランナーとして地方の事業所で働き始めた。

 ちょうど新型コロナの感染が拡大中で、換気のために社内で窓を開けることが増えた時期だった。

 職場では、ほかの社員の電話の声やコピー機などの音も耳に入ってくる。音が入ってこなくなる環境を作ることができたら、仕事のパフォーマンスが今よりも上がるかもしれない――。

 「長く働きたい職場だから、障害の特性があることを知ってもらっておいた方がいい」

 女性はそう考え、入社から1カ月たった5月、新入社員と社長との定期面談の場で、発達障害や聴覚過敏のことを打ち明けた。

 だが社長からは、思いも寄らぬ反応が返ってきた。

 採用面接のときに、発達障害…

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    天野千尋
    (映画監督・脚本家)
    2023年6月7日11時50分 投稿
    【視点】

    昨年、発達障害をテーマにしたドラマを監督しました。ももいろクローバーZの百田夏菜子さん演じる発達障害の主人公が、自分のやりたい仕事に向き合って奮闘していくストーリーです。 一口に発達障害と言っても、その特性は百人百様です。たとえば百田さん演

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    清川卓史
    (朝日新聞編集委員=社会保障、貧困など)
    2023年6月7日11時50分 投稿
    【視点】

     聴覚が過敏なのに窓際の席をあてがわれ、耳栓の使用は認めないと言われる―。会社側は「係争中」としてコメントしていませんが、これが事実であれば、見えにくい発達障害の特性を狙い撃ちして仕事を続けられないようにする、「合理的配慮」とは対極にある対

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