論壇時評 政治学者・宇野重規
ChatGPT(チャットGPT)がどうも気になる。こちらの質問に対し、あたかも人間が答えているかのように自然な言語で返事をするチャットサービスである。チャットGPTを含む生成AIと呼ばれる人工知能は、文章、画像、音楽などを自動で生成することができる。
試してみると、なるほど文章は自然であり、なかなか行き届いた回答をしてくれる。ある種のユーモアがあり、もっともな教訓さえ与えてくれる。人工知能を研究する松尾豊が指摘するように(〈1〉)、結婚する2人の情報を入力すれば、結婚式のスピーチの概略も書いてくれそうだ。会議の議事録やメールの文面作りも可能で、現在、人間がやっている仕事のかなりの部分を代替することになる。医療や法律関係など高収入の職業にも影響があり、人類社会の大きな転換点になるかもしれない。
雑誌やネットで発表される論考を紹介しながら時事問題を論じる「論壇時評」。宇野重規さんの2回目のテーマは「テクノロジーと人間」です。人口知能(AI)は人の仕事を奪ったり、政治的なプロパガンダに利用されたりする存在として懸念されています。宇野さんはそうした危険性を踏まえつつも、後半ではより大きな「人間とは何か」という問いを、AIを鏡にしながら考えていきます。
先日、東京大学の学園祭で…