ため口接客の「カフェ」で思う 「おもてなし」こそ日本のサービス?

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江戸川夏樹
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 「久しぶり」

 扉を開くと、明るく店員から声をかけられた。

 その店に入ったのは初めて。店員と顔を合わせるのも初めて。だが、会話は続く。

 「あれ、髪切った?」

 「うん。切った切った。1カ月前にね」

 「似合ってるよ。今日はゆっくりできそう? 席も空いてるからくつろいでって」

 東京・原宿に4月、「友達がやってるカフェ/バー」がオープンした。コンセプトは友達のような気楽さ。店員は俳優で、「友達」としてため口で接客する。

 飲食店の常連になるのは、ちょっとした憧れでもある。席に着けば、すっとビールが出てきて、いつも頼むつまみが添えられる。そんな店側との関係は、いかにも粋だ。

 ただ、常連が集う店は、常連になるまでがめんどくさそうとも思う。客や店側に拒否されないか。そんな怖さから、誰もが同じようなサービスが受けられる店やチェーン店に行ってしまう。

 「友達がやってるカフェ」では、そんな常連感を初めてでも疑似体験できる。メニューも、通常とは違う。

 「大変そうだから、すぐ出せるので大丈夫だよ」といえば、ドリップコーヒー(680円)。

 「元気出るやつ飲みたいな~」といえば、クラフトコーラ(820円)、といった具合だ。

 友達ではないけれど、友達の振りをして、さも気楽にカフェでくつろぐように。

 考案したクリエーティブディレクターの明円卓さんは、「劇場型カフェです。店員だけでなく、お客さんにも芝居をしてもらいます」という。

 なぜ、このような店を思いついたのか。

「これだ!」の2週間後 物件借りた

 明円さんが京都へ出張中、同…

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    仲村和代
    (朝日新聞社会部次長)
    2023年5月29日10時18分 投稿
    【視点】

    いま住んでいる街は、活気のある商店街で有名なところです。ただ、知名度が上がって人が来るようになった分、賃料が上がり、もともと多かった個人経営の店はどんどん姿を消しています。  その跡地に入るのは、だいたいがチェーン店。奇をてらっていると感

    …続きを読む