蔵元の垣根を越えて切磋琢磨 日本酒金賞数1位の山形県
24日に発表された全国新酒鑑評会の審査結果で、山形県内の銘柄20点が金賞を受賞し、都道府県別で単独1位に輝いた。県の金賞数は福島県と同数1位だった2014年以来9年ぶり、単独1位は04年以来19年ぶりの快挙となった。
「山形県の技術力の高さを証明できてうれしい」
県酒造組合(51社)の仲野益美会長(61)は取材に喜びを語った。今回は27点の銘柄が入賞し、このうち20点が特に成績が優秀と認められて金賞を受けた。ただ、福島県の10連覇を阻む結果となり、「福島第一原発事故の影響がある福島さんを抜き、複雑な思いもあります」。
1980年ごろ、山形県内では高級酒にあたる吟醸酒を造る蔵元は少なく、全国新酒鑑評会で勝負できるのは一部にとどまっていた。東北地方の他県の酒に太刀打ちできないという危機感から、87年に杜氏(とうじ)や技術者が集まり「県研醸会」を結成。米の種類や磨き具合、こうじ菌の種類などの知識や技術を共有してきた。
山形の蔵元は、新潟の越後杜氏や岩手の南部杜氏らを呼ばず、自社の社員を職人として養成しているのも特長だ。仲野会長は「職人たちが蔵元の垣根を越えて情報交換し合い、切磋琢磨(せっさたくま)してきた」。蔵元全体の底上げを図り、酒の個性の幅も広げてきたことが金賞数1位につながったと分析する。
組合によると、金賞を受けた20銘柄は純米大吟醸と大吟醸。その多くに、酒造好適米「雪女神」が使われている。県が開発を進め、2017年度に品種登録されたばかりの米で、米を多く削る大吟醸に適している。県はこれまでも吟醸酒に適した「出羽燦々(さんさん)」などを開発してきた。原料の品質向上も大きな要因といえそうだ。
吉村美栄子知事は「各酒蔵が高品質・高付加価値の酒造りに取り組んだたまもの。鑑評会の結果が弾みとなって県産酒の取引拡大につながるよう、『日本一美酒県 山形』のブランド確立に取り組む」などとコメントした。(辻岡大助)
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トップ5県の金賞数
①山形 20
②兵庫 19
③長野 16
④新潟 15
⑤福島 14
金賞を受賞した山形県内の銘柄
壺天(男山酒造)
秀鳳(秀鳳酒造場)
出羽桜(出羽桜酒造山形蔵)
千代寿(千代寿虎屋)
羽陽錦爛(錦爛酒造)
米鶴(米鶴酒造)
東の麓(東の麓酒造)
一献醸心(中沖酒造店)
花羽陽(小屋酒造)
白露垂珠(竹の露)
大山(加藤嘉八郎酒造)
栄光冨士(冨士酒造)
上喜元(酒田酒造)
初孫(東北銘醸)
あら玉月山丸(和田酒造)
手間暇(六歌仙)
松嶺の富士(松山酒造)
倭櫻(佐藤佐治右衛門)
杉勇(杉勇蕨岡酒造場)
三十六人衆 飛天(菊勇)
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- 【視点】
農芸化学者として名高い坂口謹一郎は、その古典的名著『日本の酒』(岩波文庫)のなかで、全国新酒鑑評会と並んでかつて行われていた全国清酒品評会に触れて、興味深いことを述べています。すなわち、品評会は日露戦争後の産業奨励のなかではじまり、全国の日