海水温の低さ逆手に、トラウトサーモン養殖 根室市で試験スタート

山本智之
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 刺し身や寿司(すし)だね用に人気が高い「トラウトサーモン」を海面で養殖する試験が、北海道根室市で始まった。海水温の低さを逆手にとって真夏も養殖を行い、出荷時期で国内の他産地との差別化を図るのが狙い。同市の花咲港内に浮かべた直径14メートルの円形いけすに24日、幼魚約3千匹を搬入して飼育をスタートした。

 トラウトサーモンは海で養殖されるニジマスのことで、「サーモントラウト」とも呼ばれる。サケ科の魚で、原産地はカナダやアメリカが有名だ。身の色が鮮やかで美しく、スモークサーモンなどに加工されることも多い。

 養殖試験は、根室市と市内4漁協でつくる「根室市ベニザケ養殖協議会」(大坂鉄夫会長)が主体となる。体重500グラムの幼魚を、11月下旬までに同2・5キロに育てる計画だ。

 協議会では、全国的に珍しいベニザケ養殖の事業化を目指して試験研究を続けてきた。しかし、実現には長い年月が見込まれることが明らかになり、トラウトサーモンの養殖試験も並行して進めることにした。

 トラウトサーモンの海面養殖は、国内各地で行われている。ただ、18度以下の低水温を好む性質があるため、「冬養殖」と呼ばれる方式が一般的で、春から初夏に出荷されることが多い。

 これに対し、花咲港は冷たい親潮の影響を受けて夏季でも水温が低いため、春に幼魚をいけすに入れ、秋に出荷する「夏養殖」が可能になるという。

 今回の養殖は、国内のほかの産地と時期をずらして出荷することで商品価値を高め、優位性を確立することが目標だ。

 花咲港で使用するいけすの製作や幼魚の輸送などは、水産専門商社「ニチモウ」(東京都品川区)が行った。現地を視察した根室市の石垣雅敏市長は「道東の冷涼な気候を生かした養殖に期待している。地域の活性化につなげたい」と話した。(山本智之)

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