願い込めて打ち鳴らす「シャンシャン」 独学でつかんだ伝統の鈴の音

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井上昇
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 奥三河地方の伝統芸能「花祭(はなまつり)」では、鬼の面をつけた舞い手らが夜通し舞い、美しい音色の鈴が打ち鳴らされる。この鈴を独学で作る男性が愛知県東栄町にいる。歯科技工士として培った経験や技術をいかした鈴は、いまや「花祭」に欠かせない祭具となっている。

 「花祭」は、北設楽郡(東栄町、設楽町、豊根村)に伝わり、1976年に国の重要無形民俗文化財に指定された。五穀豊穣(ほうじょう)や無病息災を願う神事で、「テホヘ」のかけ声や「シャンシャン」と鈴を打ち鳴らす音が響く。現在は14地区で11月から数カ月の間、開かれる。コロナ禍で中止されていたが、昨年12月に3年ぶりに行われた。

 「月地区」で使われる鈴の多くは、原田林平さん(73)が手がけ、「丈夫で音色も良い」と評価が高い。生まれも育ちも月地区の原田さん。「花祭を毎年楽しみに、ずっと生活してきた」と、強い思い入れがある。

 鈴作りを始めたのは8年前。舞い手が何度も鳴らすために鈴がすぐに壊れると知ったことがきっかけだ。手先の器用さに自信がある自分が作ってみようと考えた。

 歯科技工士として東栄町で35年間働きながら、入れ歯や銀歯など、コンマ数ミリ単位の調整をこなしてきた。その技術を用いることで、より良い鈴ができるのではないか。そう考え、鈴作りに取り組み始めた。

 作り方は、全て独学だ。

 市販の鈴を分解して構造や素…

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