第1回灘高→東大→ハーバード、市民の心つかんだ浸透術 26歳市長への道
高級住宅地として知られる兵庫県芦屋市で、全国最年少の市長が誕生した。
4月23日夜、当選が確実になったとの知らせを受け、高島崚輔(りょうすけ、26)はテレビカメラを前に右腕を突き上げた。
「芦屋市は世界トップクラスの魅力、可能性がある。市政のかじ取りを全力で進めていく」
全国屈指の進学校・灘中高を経て東大へ。米国の名門ハーバード大を卒業した新市長として、時の人となった。
ルポ インディーズ候補の戦い
選挙に必要とされる地盤(後援会組織)や看板(知名度)、かばん(資金)をほとんど持たず、完全無所属で戦う「インディーズ(独立系)候補」と呼ばれる人たちがいます。既存政党のあり方に疑問を唱え、声なき声を届けようとする挑戦だと、自分たちの選挙を位置づけます。簡単ではない試みですが、議員のなり手不足や政治への無関心の広がりが指摘されるなか、新たな民意をつかむことはできるのかどうか。一番身近な選挙である地方選挙で、そんな候補者たちの戦いを追いかけました。
エリート街道を進んだ高島が芦屋市長選に立候補するために選んだのは、既成政党から距離を置く「インディーズ候補」の道だった。
政党が推す候補に比べて、環境は厳しい。応援してくれる組織がないと、全域にポスターを張るのも簡単ではない。集会などを開くには資金も必要だが、それも自分で調達する必要がある。
まして、今回の市長選の相手は、選挙戦でなかなか負けないとされる2期目を目指す現職の女性だった。
現職相手の勝負「厳しい」
全国市長会によると市長の平均年齢は61・6歳(昨年8月現在)。政治の世界は若者の参入を簡単に許さない。
周囲からは「戦いは無謀」との声も耳にした。高島自身も「この勝負は厳しい」との思いがあった。
実際、昨年12月に立候補を表明した後、JR芦屋駅前であいさつや演説を始めたが、足を止めて聞いてくれる人はいなかった。
ビラも受け取ってもらえず、新顔市議候補と間違われることもしばしばだった。
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