第3回借金200万円かけても当選望み薄 43歳会社員を駆り立てた怒り
兵庫から奈良へ、電車で向かう道中だった。会社員の羽多野貴至(43)は覚悟を決めた。
奈良を住みよい街にするために挑む。借金を背負ってでも、と。
3月23日午前7時半、勤務する兵庫県尼崎市にある鋼板メーカーに到着すると、上司に休暇を届け出た。
理由は伏せた。
実際に奈良県知事選に立候補できるかどうか自信がなかったためだ。
この日は告示日で、立候補締め切りまであと9時間半に迫っていた。
最寄りの阪神・杭瀬駅に急いで戻り、電車で1時間以上かけて、奈良市の奈良県庁に向かった。
選管職員「本当に出るのか」
午前10時ごろ、選挙管理委員会事務所に飛び込み、立候補の意思を伝えた。
「本当に出るんですか?」。応じた選管職員は「飛び入り」に驚いた。挑戦には300万円必要だったが、貯金は約100万円しかなかった。
「知事選に出たいので200万円助けてほしい」
家族にお願いし、自宅近くの銀行まで一緒に来てもらった。
供託金と呼ばれる仕組みで、候補者の乱立を防ぐため有効投票総数の10分の1に満たないと没収される。
お金の納付を済ませた後は、選管職員につきっきりで手伝ってもらい、申請書を作った。
「立候補の届け出書」や氏名をひらがなやカタカナで表記するのに必要な「通称認定書」、選挙ビラの申請書。手続きを終えたのは締め切り直前、午後5時前だった。
借金を抱えてまで、どの政党からも支援を受けない完全無所属の「インディーズ候補」となった。
何が駆り立てたのか。
立候補を決めたのは告示日当…
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