なぜ数万円のために殺されたのか 未解決のまま遺族が過ごした13年
阿部育子
いつものように仕事にでかけた夫は翌日、警察署で変わり果てた姿で横たわっていた。神奈川県平塚市の新幹線の高架下に止められたタクシーのトランクから、運転手の荒井庄次郎さん(当時62)の遺体が見つかった事件は5月20日に未解決のまま発生から13年を迎えた。遺族は「逃げ続けても罪は決して消えない」と犯人への思いを語る。
荒井さんの妻秀子さん(68)に事件の知らせがあったのは朝の5時半だった。前日、いつものように仕事に出かけた夫の変わり果てた姿にぼうぜんとし、当日の記憶はあまりない。
「無口で真面目で、優しい夫でした」。母の勧めで出会い、3人の息子と娘に恵まれた。運転好きの夫がハンドルをにぎり休日は家族でキャンプへ。2人でスーパーに買い物に行くのも楽しみだった。
荒井さんは長く勤めた製紙会社が倒産し、2007年にタクシー運転手に。利用客を目的地に的確に送れるように平塚市の地図をコピーしてファイルにまとめた。建物の場所を覚え、行きやすい道はあるのか熱心に勉強していた。
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