LGBTQ×羅生門=「怪物」? いいえ。(小原篤のアニマゲ丼)

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 第76回カンヌ国際映画祭「怪物」公式記者会見で、ある記者が質問。「日本ではLGBTQ映画はあまり作られず見られてもいない気がしますが?」

 是枝裕和監督「確かにそんなに多くはないかな。ただこの作品はそれ(LGBTQ)に特化した作品ではありません。成長過程で誰にも起こりうる、言葉にしにくい葛藤や感情を抱えた子どもの話と思って作りました」

 日本にもLGBTQ映画はそれなりにあると思いますが、6月2日公開の映画「怪物」に関して是枝監督が言ったことは確かにそうです。「LGBTQ映画」と受け取られる側面を持ちながら、未分化であいまいなものを確信的に核心にすえている作品です。それゆえそこの説明が難しい。

 なおかつ、一つの出来事を「親の側」「教師の側」「子どもの側」から三様に語り直す構成を取りながら、「羅生門」とは異なり、話者の違いでスパッと割り切らない。三つの語りが一つの像を結びそうに進んでいくのですが、ある部分はパズルのようにきれいにハマり、ある部分は矛盾してぶつかり、ある部分は欠落(謎)が放置される(ように見える)という厄介な映画です。多少、作り込み過ぎ、凝り過ぎの感じもします。好悪が分かれるかも知れません。

 観客は登場人物と一緒に、不…

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