ミック・ジャガーと歌えた凄さ ティナ・ターナーが切り開いた未踏
米国出身の歌手、ティナ・ターナーさんが死去した。夫の家庭内暴力や薬物中毒に苦しんだ時代を乗りこえて復活したターナーさん。人種差別が激しい公民権運動の時代に世に出て、黒人女性歌手の道を切り開いた人物でもある。その壮絶な生涯を投影するかのように歌に宿っていた凄(すご)みを、音楽ライターの岡村詩野さんが語る。
死の淵から帰って来た
不幸な時代の長い人でした。ドメスティックバイオレンス(DV)に苦しんで、コカインやアルコールにおぼれ、廃人みたいになっていた彼女が、40代になって、死の淵から帰ってきた。
1980年代初頭に復活した当時、中高生だった私は「格好良い」と思いました。頭をあえてライオンヘアにして、髪を振り乱して体を張って。パンツが見えるスレスレの本当に短いスカートで、高いハイヒールを履いて、編みタイツで……。ファッションも含めてすごくパンチが効いてましたよね。
女性の「可愛らしさ」やアイドル性といったものではなく、ティナのように男性ミュージシャンとも対等に身体を張って戦えるぐらいの強さを持った女性ボーカリストは本当に少なかったと思います。
公民権運動の時代に活動していたので、黒人差別や女性に対しての低い評価みたいなものと戦ってきた人の一人だと思います。
そして、ローリング・ストーンズやビーチボーイズ、デビッド・ボウイ、ロッド・スチュワート、エルトン・ジョンあたりの、黒人の表現に憧れているロックミュージシャンたちが、彼女の表現のホットな部分やタフな部分にすごくひかれていくわけですね。
彼女のルーツには、ブルース…