シュールで怪しい「パンどろぼう」 柴田ケイコさんが込めた願いとは

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聞き手・大坪実佳子

子どもから大人まで大人気、「パンどろぼう」の誕生秘話を作者・柴田ケイコさんに教えていただきました。

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パンが大好き イタズラ好きな生き物の正体は…

 編集者さんから「パンで絵本を描きませんか」と言われたのが始まりでした。たまたま私の名刺の絵柄が、パンをかぶったシロクマが逃げている絵で。パンと泥棒の組み合わせはあまりないなと思いつき、制作が始まりました。

 最初はクマやサルの頭にパンをかぶせて描いてみたんです。でも、体で正体がバレてしまう。バレたら面白くないですよね。パンにすっぽり体ごと入れるサイズで、逃げ足が速くて、イタズラ好きな生き物ってなんだろう。そうやって考えたのが今の正体です。

 パンどろぼうは、パンが大好き。おいしいパンを求めてパン屋で盗みを繰り返しますが、ある日盗んだパンがまずくてカンカンに怒ります。この「まずい」の場面は、構想を練っていた当初から、読者さんに笑って楽しんでもらおうと決めていました。

 おいしいと思って食べたのに、あまりのまずさに目や舌が垂れ下がって、ヒゲも下向きになってしまう。絵でみせるところなので、怪しくてシュールに描きました。

「パンどろぼう」(KADOKAWA、2020年、シリーズ累計180万部) おいしいパンを探し求め、パン屋へしのびこんでこっそりパンを盗む「パンどろぼう」。ある日、森の中で「せかいいちおいしい」と書いてあるパン屋を見つけますが……。第11回リブロ絵本大賞、第1回TSUTAYAえほん大賞を受賞。第13回MOE絵本屋さん大賞2020第2位。

 イラストでここまで表情をつけたのは初めてで、気持ち悪いと言われるかなとやや心配でしたが、読みながら「まずい」顔をまねしてくれるお子さんもいると聞いてうれしかったですね。人間もそうですが、ちょっと間抜けなところがあると、いとしいなと思ってしまいます。

 パンどろぼうには、「ふっく…

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