変わってきたはずが…選挙報道に潜む、ステレオタイプという「死角」
メディア空間考 山田菜の花
「新聞、変わってきたな」と思うことの一つが選挙報道だ。この春の統一地方選では、各紙に「女性最多」「女性初」といった大きな見出しが躍った。いずれの記事からも、長らく中高年男性が占めてきた政治の世界に多様性をもたらそうという意識が表れていた。女性の候補者・当選者数が単なるデータとして文中に添えられるだけだった20年ほど前とは、隔世の感がある。
でも政治への関わり方という点で圧倒的多数なのは、票を投じる有権者だ。記者や編集者などとして選挙報道に携わりながら、候補者や議員に比べて取り上げ方が変わらない気がしていた。
そこで朝日、毎日、読売の3紙に掲載された過去8回分の衆院選の記事を対象に、有権者の性別や語った政策などを分析した。すると、各紙とも男性が過半数を占めていた。実際の有権者数は女性の方が多いのに、である。経済政策などは男性が、子育てや介護政策などは女性が語りがちだった。
有権者報道は、多様な意見をすくい上げるため、異なる属性を設定して取材する場合が多い。ところが実際は、「男性は仕事、女性は家庭」というステレオタイプな描写に陥っていた。女性候補者や議員はジェンダー視点に立って報じられているのに。結果は立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科で修士論文にまとめたが、有権者報道が政治離れやメディア不信の一因になっているかもと思うと、頭をかきむしりたくなった。
この結果、どう思いますか? 政治分野における女性の参画などに詳しい上智大法学部教授の三浦まりさんに聞いた。
「やっぱりそうなんだ、という結果ですね」と三浦さん。一般に女性が政治に関わろうとするとき、「一般市民」としては容認されないが、男性にはない「母親」のような属性であれば正当性が付与されるという。
「候補者であれ有権者であれ…
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- 【視点】
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