11歳の一人娘へ、余命半年の父がYouTubeに残すメッセージ

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木元健二
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伝えたいこと㊤

 余命わずか、と告げられた時、誰に何を伝えたくなるだろう。

 いま54歳の父は、11歳の一人娘へのメッセージを、「YouTube」に残すことにした。投稿を始めて1年余。まだあどけない娘の顔を見つめると、メッセージはこんこんと湧いてくる。

 島根県雲南市で妻子と暮らす加治川健司さんは4年前、悪性リンパ腫を発症した。2度にわたる抗がん剤治療は不首尾に終わる。昨年2月、余命半年と告げられた。

 心を覆うのは、娘の風花さんのこと。父親として、何を残せるだろう。

 自問を重ねた後、こう思い至る。どれだけ大切に思ってきたか。ありったけのメッセージを伝えよう。

 「全身全霊で愛してくれた人がいた」という証し。それはこれからの娘の歩みで、とりわけ不如意な時の支えになるだろう。

 まず、原稿用紙に書こうとした。でも、こみ上げる思いが強すぎて、つい力んでしまう。あれもこれも心に浮かび、文章がうまくつなげられなくなる。

 では、今風にYouTubeを使えばどうだろう。普段の様子を映し、字幕を通じて語りかければいい。デジタル機器に囲まれて育った風花さんも、後々、触れやすいだろう。

 かつて飼っていた愛犬、愛猫の名前からチャンネルの名は「ジャムミント」(https://www.youtube.com/@user-jam-mint別ウインドウで開きます)とした。

 明朗に。

 動画の編集上の心構えだ。やせがまんをしてでも楽しそうにふるまおう。何度でも見返してほしいから、元気なパパでいこう。

 自分が他界したことを前提に、初回はこんな字幕で始まる。

 〈風花ちゃん、こんにちは…

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    岩尾真宏
    (朝日新聞名古屋報道センター次長)
    2023年5月30日14時21分 投稿
    【視点】

    ぜひ多くの方にこちらの記事を読んで欲しいと思い、コメントしました。日々の暮らしの中での何げない営みのありがたさ、家族への向き合い方、生きることなど、色々なことを考えさせられます。重松清さんの小説「その日の前に」(文芸春秋)と重ねながら、記事

    …続きを読む