音声入力でカルテ作れば、月の業務は8時間短縮も 病院で実証実験
病院で電子カルテを作るときに人工知能(AI)を使って音声入力すれば、医療者の勤務時間を月に8時間近く短縮できそうだ――。NTTコミュニケーションズ(東京)と奈良県は、「医療DX(デジタルトランスフォーメーション)」の実証実験にもとづき、このような推計を発表した。
実証実験は今年1~3月、奈良県内にある2カ所の公立病院で実施。医療者に貸与していた業務用端末をPHSからスマートフォンに切り替え、電子カルテの入力はパソコンからではなく、スマホ内のAI音声認識機能を使ってもらった。また、位置情報がわかる別の端末も身につけてもらい、医療者の院内での動き方を分析した。
その結果、カルテの入力業務について、長く時間がかかっている医療者の場合、1日の勤務時間全体の3割を占めていた。1日に5回以上、音声入力を使った医療者はすべて「負担が軽減された」と答えたという。入力1回につき2分ずつ短縮できたと仮定すると、職員1人あたりの業務時間が月に7・8時間削減できると推計した。
勤務時間から医療行為の時間を除くと、フロア間などの移動が2割弱を占めていたことがわかった。院内のレイアウトや機材の配置場所が重要だとし、チャット機能を使うことでも移動時間の短縮が期待できるという。
来年4月から「医師の働き方改革」が始まり、時間外労働に上限が設けられる。このため医療機関では「医療DX」による業務の効率化に取り組んでいる。
NTTコミュニケーションズは「まだ多くの医療機関がPHSを使っている。スマホとAI音声認識機能などのツールをパッケージ化して、来年4月に間に合うよう提案していきたい」としている。(枝松佑樹)