技能実習の廃止で問題は解決するのか 外国人支援の労組委員長の懸念

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聞き手・岡田玄
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 国際貢献を名目にした外国人技能実習制度は、人権侵害の温床になっていると批判されてきた。国は有識者会議の中間報告を受けて、労働力としての実態に即した新制度をつくる方針だ。岐阜一般労働組合(岐阜市)は個人でも入れる労働組合として、実習生たちを支援してきた。北島あづさ執行委員長は、「制度を廃止すればこれまでの課題がすべて解決する、とは思えない」と指摘する。

きたじま あづさ

 1963年生まれ。岐阜一般労働組合執行委員長。NPO法人「労働相談.com」専務理事のほか、岐阜県労働委員も務める。

 ――どのような支援活動をしてきましたか。

 「岐阜県を中心に外国人労働者を支援してきました。労災事故やハラスメントで働けなくなった実習生を保護したり、残業代の支払いを求める団体交渉をしたりしてきました。在留期限ぎりぎりで雇用主に支払わせることができた残業代を持って空港に向かい、帰国便に乗る直前の実習生たちに手渡したこともあります。週3、4回は空港へ通っていました。裁判で会社側と争うこともあります。正確な数はわかりませんが、支援した実習生は千人では足りません」

 「問題は残業代の未払いだけではありません。根本には差別意識があります。15年ぐらい前は外出や恋愛、電話の禁止は当たり前でした。ぼろぼろの宿舎に住まわされ、食べられないような状態の米を支給されていた実習生たちもいました。最近はずいぶん良くなりましたが、2010年代初めまでは、とにかくひどい状況でした」

炎天下のバス停で

 ――残業代の未払いなど、不正が広がっているとの見方もあります。

 「そうですね。一方で、こんな光景も目にしました。炎天下のバス停で、杖をついた高齢の女性が、大きなトランクを持って帰国する実習生を見送っていました。縫製業の零細企業の人です。実習生は名残惜しそうにバスに乗り込み、見送る女性はバスが見えなくなるまで深々と頭を下げていました。実習生がいなければ事業も生活も成り立たなかったという感謝の念がにじみ出ていました」

 「制度を悪用する業者は確かに糾弾されるべきです。けれども、法令順守や業界のクリーン化をめざして奮闘しているところも多いのです。制度に関わっている業者のダークな面がクローズアップされがちですが、改善に立ち上がる人たちも確実に増えています」

被害に遭った外国人実習生たちの支援を通じ、技能実習制度の問題点を熟知する北島委員長ですが、「廃止すれば問題がすべて解決するとは思えない」と語り、むしろ、このまま廃止すれば、状況が悪化しかねないと心配します。その理由とは。

 ――制度には問題があり不正を助長してきたと批判されています。

 「支援の経験から言うと、労…

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