「みんなが驚く映像を」 思いつきで撮影した40年前の津波の残響
本山秀樹
軽い気持ちで始めた撮影だったのに、次第に手が震えだした。秋田市の信太(しだ)弘毅さん(68)は日本海沿岸を襲う津波をビデオカメラで捉えた時のことが忘れられない。当時、津波の映像は希少で、研究者からも注目された。だが自戒を込めて振り返る。あの映像を撮って良かったのだろうか――。
その頃、家庭用のビデオカメラは、カメラ部分とテープを収めるデッキ部分が別々だった。手軽に持ち運べる物ではなく、大卒の初任給が13万円の時代にセットで約30万円と高額。それでも、人気が出始めていた。
家電量販店に勤めていた信太さんはこの日、新商品のビデオカメラを実演しようと得意先に向かう途中だった。昼食に立ち寄った秋田県八峰町の海沿いの高台にある食堂で、異変に気づいた。
【動画】日本海中部地震の津波の第1波の映像。護岸を乗り越えた波が海沿いの集落を襲った=信太弘毅さん撮影、今村文彦・東北大教授提供
「驚かせてやろう」と撮影始めた
テレビが10分ほど前に起き…
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