余命半年の父は覚悟を決めた 11歳の一人娘に伝えたいこと

木元健二
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 余命わずかと告げられた54歳の父が、11歳の一人娘にYouTubeでメッセージを残している。始めて1年余、動画は100本を超える。

 島根県雲南市加治川健司さん。悪性リンパ腫でステージ4。余命半年と告知されている。娘、風花さんに何を残せるかを考えた。うまく文章にできず、YouTubeでメッセージを残すことに。愛犬と愛猫の名からとった「ジャムミント」(https://www.youtube.com/@user-jam-mint別ウインドウで開きます)とのチャンネル名で公開を始めた。

 「正直、つらくて見られない動画もあります」と妻の靖子さん(49)は明かす。そんな動画は風花さんと2人きりになった時に見ようと決めている。

 加治川さんは東京で育った。30歳を前に生き方を見つめ直し、島根で林業の仕事があると知り飛び込んだ。靖子さんと結婚し、43歳の時に風花さんを授かった。

 2018年12月、親の介護を視野に東京へ移住した。首のしこりに気づき、悪性リンパ腫の発症とわかった。2度の抗がん剤治療をへて、20年夏、島根に戻った。家族となじんだ地に帰りたかった。

 同じ年の秋、病院で3度目の抗がん剤を勧められたが、悩み抜いて受けないことにした。医師には余命半年ほどと告げられた。昨年2月、医師に再び余命半年と告げられ覚悟を定めた。

 動画を残すようになったのは、この頃からだ。娘にも、はばかりなく来し方を伝えている。かつて離婚したこと、自らの非が大きかったこと。そして靖子さんと出会えた幸福も。動画メッセージは一冊にまとめられ、「お父さんは、君のことが好きだったよ。」(扶桑社)とのタイトルで今年2月に出版された。(木元健二)

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