「バス来ました」の優しい声 小学生に助けられた全盲男性が願う社会
全盲の男性のバス通勤を、10年以上にわたって小学生が後輩に引き継ぎながら手助けしてきたエピソードが和歌山市にある。子どもたちの小さな親切の話は2年前、メディアに取り上げられ全国に知られた。その後、話をもとに絵本も出版された。男性は視覚障害者が外に出やすくなる社会を願って、体験を講演している。
和歌山市役所に勤めていた山崎浩敬さん(61)が、目の難病「網膜色素変性症」と診断されたのは30代前半だった。「将来失明する覚悟をしてください」という医師の言葉が信じられなかった。しかし徐々に目は見えにくくなり、40歳を過ぎて完全に失明した。
家族や同僚の支えもあり、山崎さんは休職ののちに職場復帰できた。通勤もバイクからバスに替わったが、白杖(はくじょう)をつきながら1人でバス停まで歩くのはとても時間がかかった。通勤路から外れて知らない道に迷い込み、家族に迎えに来てもらったことも何度もあった。
バス停で考え事をしているとバスが来たことに気がつかず、乗りそびれてしまう。「通勤にはすごく神経を使ってしんどかった」。バスが来たことが分かったら、白杖でバスの側面を触りながら入り口を探して乗り込むが、空いている座席が分からないので、つり革を持って立ち続けるという毎日だった。
その日々が変わったのが、同じバス停で待つ小学生の女の子の行動だった。
「おはようございます。バス…
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