レトロな魅力と悲哀、にぎわい消えた「市場跡」 神戸に多く残る理由
黒田早織
全国でも有数の「市場どころ」である神戸。街を歩くと、にぎわいを失い閉業してしまった後もそのままの形をとどめた「市場跡」がいくつもある。神戸にはなぜ、このレトロな光景がたくさん残っているのか。
神戸電鉄長田駅から徒歩10分。長田区の山あいの住宅街に、武骨なトタン屋根のアーケードがある。
通りの入り口に「名倉市場」と看板があるが、4月に訪ねると、十数軒の店はシャッターで閉ざされていた。
入り口から4軒並んだ角を曲がると、幅2メートル弱のアーケードが数十メートル続く。破れた天井から差し込む光が、さびた鉄骨やレトロな看板を淡く照らしていた。時が止まったかのようで、不思議な趣がある。
市の記録によると、名倉市場は1936年創立。かつては20店が軒を連ねた。
がらんとした市場を、手押し車を手に女性が歩いてきた。「市場の中に70年近く住んでいる」という金森京子さん(89)。「店をたたんだ後もここに住み続けている人たちが、今も10世帯くらいいるんよ」と教えてくれた。
兵庫区の荒田廉売場跡地や垂水区の垂水廉売市場。市内を散歩していると、閉業した市場が住宅街などにひっそりたたずんでいるのによく出くわす。
神戸に多い理由は
市小売市場連合会の小林清美…