イリヤ・カバコフさん死去、ユーモアと皮肉を備えた現代美術家
寓話(ぐうわ)的な作風で知られ、日本国内の芸術祭でも親しまれた旧ソ連(現ウクライナ)出身の現代美術家イリヤ・カバコフさんが27日に死去した。89歳だった。「イリヤ&エミリア・カバコフ財団」がフェイスブックで発表した。
現在のウクライナに生まれ、モスクワで学んだ。同地では挿絵画家の傍ら地下活動的な芸術活動を継続。1990年前後にニューヨークに拠点を移し、妻エミリアさんとの共同制作を本格化させた。
日常生活や歴史を題材に、ユーモアと皮肉を備えた空想的、寓話的な立体作品を多く手掛けた。ベネチア・ビエンナーレなどの国際展で発表を重ねたほか、水戸芸術館や東京・六本木の森美術館、世田谷美術館でも、夫妻によるものも含め個展を開催。新潟県の「大地の芸術祭」で棚田の風景と農作業の営みを重ねた野外作品を発表するなど、国内の芸術祭でも親しまれた。2008年高松宮殿下記念世界文化賞を受賞。
昨年の大地の芸術祭では、夫妻で新作「手をたずさえる塔」を発表。世界が分断され、寛容さが失われていく中で、民族や宗教、文化を超えた平和や対話を表現した。