原発運転延長「規制緩んだと見えないように」 エネ庁側の文書に記載
原発の60年超運転を可能にする法改正をめぐり、経済産業省資源エネルギー庁が、遅くとも昨夏には原子力基本法などの改正を検討していた。朝日新聞の情報公開請求に対して同庁が開示した文書で、運転延長に向けた筋書きの一端が明らかになった。(佐々木凌)
原発を推進する側のエネ庁と、規制側である原子力規制庁は昨年7月28日~9月28日、7回にわたって秘密裏に面談を繰り返していた。その初回の面談でエネ庁は、法改正イメージの概略図として二つの案を示していた。
A案は、原子力基本法に「運転期間は利用政策の観点から別に法律で定める」ことを追加し、原子力規制委員会所管の原子炉等規制法から経産省所管の電気事業法に、運転期間の規定を「引っ越し」させる内容だった。
B案は、原子力基本法を改正せず、エネルギー政策基本法を改正する内容。この場合は「炉規法は改正せず」と書かれていた。
この日は、岸田文雄首相がGX実行会議で原発再稼働などの政治決断が必要な項目を示すよう指示した翌日。首相が運転延長の具体論を検討するよう指示するよりも約1カ月前のことだった。遅くともこの時点でエネ庁は、運転期間の延長を可能にする法改正案のイメージを描いていたことが読み取れる。
2回目の面談(同8月19日)の資料では、「運転期間について、炉規法(規制)と電事法(利用)の関係整理が必要」、「原子力基本法とエネルギー政策基本法を改正することで対応する」と記され、電事法と炉規法の条文改正案も示されていた。
その後、まとめられた束ね法案では、エネルギー政策基本法の改正は盛り込まれなかったが、原子力基本法に運転期間の規制を脱炭素や電気の安定供給のためと明記する条文が追加された。
原子力基本法は、故・中曽根康弘氏らが主導し、議員立法で1955年に制定された原子力施策の根拠法。原子力の平和利用とその三原則(民主・自主・公開)をうたい、「原子力の憲法」とも言われる。
原子力基本法を所管する内閣府原子力政策担当室によると、エネ庁が検討を進めていることは「昨夏の段階からアイデアとしては聞いていたが、特に議論はしていない」という。所管外のエネ庁が検討していたことについては「エネ庁が断りもなく改正の方針を決めたのであれば問題だが、検討途上の頭の体操なので特段問題はない」とする。
原子力基本法の所管は内閣府原子力政策担当室。所管外のエネ庁が検討していたことは問題ではないのか、認識を聞きました。また、エネ庁側の文書には「安全規制が緩んだように見えないことも大事」との記載もありました。
原子力基本法の改正案につい…
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