ウクライナ公共放送「ススピーリネ」のミコラ・チェルノティツィキー会長が来日し、29日に都内で会見した。戦時下における公共放送の役割について同氏は「我々は国民のために存在している」と強調し、「正直に、正しく情報を伝えることが重要だ」と語った。
ウクライナは昨年2月にロシアによる全面侵攻を受け、現在も領土の2割をロシア軍に占領されている。占領地では従来のメディアが役割を果たせなくなり、ロシア側の一方的なプロパガンダが展開される。
「ウクライナにとって一番大きな災害はロシアという隣国だ」と語るチェルノティツィキー氏は、対抗策としてラジオやソーシャルメディアを含むネット上での発信が重要だと指摘。一方、「どの程度できているかは疑問だ」と吐露した。不偏不党や中立といった記者の原則は「保たなければならない」とし、「テロリストが意見を伝えるような場を与えてはいけない。私たちはすべてのウクライナ国民の言論の自由を守っている」と語った。
同氏によると、ススピーリネの職員82人も兵士として戦っている。「安全な地域はない」といい、機材が使えず十分な放送ができない地域もある中、最前線に残って戦況を伝える記者がいる。「それが真の民主主義につながる」と述べた。
国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)によると、侵攻開始から今月21日までにウクライナでは民間人8895人の死亡が確認された。同氏は「(ロシア軍による)戦争犯罪を扱う番組が増えている」と指摘。視聴者からは歴史番組の需要が増しているが、ニュースだけでなく、文化的な番組や子ども向けのアニメも重要なコンテンツだと語った。
同局は国営テレビ局が前身で、2017年に地方局や映画製作会社など32社が統合して設立。国際協力機構(JICA)は同年から途上国援助(ODA)の枠組みで、NHKの関連団体と報道体制の整備や人材育成に協力。今回の来日もJICAの招きで実現した。
JICAによると、同局は誰もが正確で中立・公正な情報を得るという「国民の知る権利」に応えることを掲げる。職員数は約3900人。今回の来日では、NHKの大阪放送局などを訪問するという。(藤原学思)
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