2カ月でクマの目撃89件 新潟に危機感「遭遇を前提に備えて」
新潟県内で今年もクマが人里近くに出没する例が相次いでいる。県のまとめでは、4月1日に長岡市内で初めて目撃されて以降、今月26日までに16市町で計89件に上る。今年は特に、冬眠に備える秋にかけて山から人里に近づくクマが増える恐れもあり、専門家は「出くわしたら決して背中を見せて逃げないで」と呼びかける。
26日午前8時ごろ、魚沼市西名新田の国道290号で、体長1メートルほどのクマが道路を横切るのを、車を運転していた女性が目撃し通報した。県警小出署によると、目撃現場は近くの住宅から約50メートルの距離にあり、署や市は周辺の住民に注意を呼びかけた。同市内では同じ日の正午すぎにも子グマが目撃された。
県鳥獣被害対策支援センターによると、県内に生息するツキノワグマは、秋にドングリなどを食べて栄養を蓄え、冬眠中に出産。山菜が芽吹き始める春先に冬眠から覚め、活動を活発化させる。昨年はドングリの実りが比較的良く、出産数が多かった可能性があり、子連れの母グマは攻撃的になる傾向があるため注意が必要という。
29日現在で人的被害は確認されていないものの、2020年は9~12月に20人が襲われ、関川村の70代女性が亡くなった。山に入るときは鈴やラジオで音を出し、人の存在をクマに知らせるほか、遭遇したときに備えてクマよけスプレーを携帯するといいという。
担当者は「今のところ目撃件数は平年並みだが、これから増えるのではないかと危機感を持っている」と話す。
野生動物の生態に詳しい山本麻希・長岡技術科学大准教授は「ドングリは豊作だった翌年に凶作になることが多い」と指摘。今年は凶作の可能性があり、「凶作だと夏ごろから人里に下りてくるクマが増える」とし、「クマと遭遇することを前提に備えるべきだ」と説く。
クマと距離がある場合、正面を向いたまま目を離さず、ゆっくり後ずさりしながら離れていく。襲ってきた場合は、地面に伏せて後頭部を両手で覆う姿勢を取り、致命傷を避けることが大切という。(初見翔)
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自治体別のクマの目撃件数
(県まとめ。26日午後3時時点)
長岡市 18件
糸魚川市 13件
上越市 12件
魚沼市 8件
五泉市 7件
十日町市 6件
新潟市 5件
阿賀町 4件
三条市 3件
新発田市 3件
胎内市 3件
阿賀野市 2件
南魚沼市 2件
小千谷市 1件
加茂市 1件
見附市 1件