生活保護の減額訴訟 11件目の取り消し判決 静岡地裁

本間久志 小山裕一
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 国が生活保護の基準額を2013~15年に引き下げたのは「健康で文化的な生活水準の維持」を定めた生活保護法に反するとして、静岡県の受給者6人が静岡市などを相手取り、減額決定の取り消しを求めた訴訟の判決が30日、静岡地裁であった。菊池絵理裁判長は物価動向を踏まえて引き下げた厚生労働相の判断に「過誤、欠落がある」として減額決定を取り消した。

 同種訴訟は全国29地裁に起こされ、地裁判決は21件目。うち減額決定の取り消しは11件、請求棄却は10件となった。

 菊池裁判長は、物価動向を踏まえたデフレ調整について「統計などの客観的数値との合理的関連性を欠き、専門的知見との整合性がない」と指摘。生活保護基準の引き下げに用いた物価指数についても「テレビなどの物価の下落が過大評価された可能性は否めない」などと判断した。

 基準額の見直しは5年に1度ある。国は13~15年、生活保護費のうち、食費など生活費にあたる「生活扶助」の基準額を、物価下落などを理由に段階的に引き下げた。3年間で平均6・5%、最大で10%、総額670億円を削減した。(本間久志、小山裕一)

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    清川卓史
    (朝日新聞編集委員=社会保障、貧困など)
    2023年5月30日15時3分 投稿
    【視点】

    生活保護基準引き下げは社会保障の根幹に関わるものです。記事にある通り、その減額決定を取り消す地裁判決(原告勝訴)はこれで11件目です。4月の大阪高裁(控訴審判決)は原告の請求を退ける逆転敗訴でしたが、5月の千葉地裁、静岡地裁と再び原告勝訴判

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