天皇陛下も演奏、奇跡の一本松を使ったビオラ 鎮魂の音色を弾き継ぐ

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多田晃子

 天皇、皇后両陛下は3~4日、全国植樹祭の式典に出席するため、岩手県を訪れる。両陛下は東日本大震災の被災地に度々足を運んできたが、代替わり後の訪問は初めて。震災後の津波に耐えた陸前高田市の「奇跡の一本松」を視察する。天皇陛下はかつて一本松や津波の流木で作られたビオラを奏でている。

被災地に寄せる思い

 2013年7月、学習院OB管弦楽団の定期演奏会。団員として演奏した皇太子時代の陛下が、津波の流木や一本松から作られたビオラを掲げると、万雷の拍手がわき起こった。

 その様子を見守った楽器職人の中沢宗幸さん(82)は、「ただただ、感謝、感動でした」と話す。陛下の被災地に寄せる心や、復興を支援する思いが伝わったと感じた。

 弦楽器専門商社「日本ヴァイオリン」の創業者で顧問の中沢さんは、ストラディバリウスなどの名器を数多く修理し、世界的な職人として知られる。

「あれはがれきなんかではない」

 中沢さんが、流木で楽器を製作したきっかけは、報道で被災地の「がれきの山」を見たバイオリニストの妻の一言だった。

 「あれはがれきなんかではなく、そこで生まれ育ち長い間人々の営みを見守ってきた木々よね。あれでバイオリンは作れないの?」

 その地で暮らす家族の思い出や歴史が詰まった木をよみがえらすべく、陸前高田市で材料を探した。製作後、試奏と調整を繰り返し、裏板には知人が油絵で一本松を描いた。

 その後、保存のため一本松が伐採された際、幹の一部を分けてもらうことができ、表板と裏板をつなぐ「魂柱(こんちゅう)」に使った。

思いを弾き継いでいく

 追悼の思いと復興への願いを音色に乗せ、多くの人に弾いて欲しい――。プロ・アマを問わず、国内外で1千人のバイオリニストがリレーのように弾き継いでいくプロジェクトを始めた。

 13年1月、演奏を聴いた上…

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