日の光を浴びられない 「海陽」と家族が望む奇跡

金居達朗
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 太陽の光に当たることができない。

 そんな難病を抱える我が子を見守りながら、SNSで情報を発信して、治療法が見つかる日を信じ続ける親子がいる。

 2021年5月、生後半年だった浜松市中区の新貝海陽(しんがいうみひ)君(2)は、紫外線を受けると重度のやけどを負い、発がんリスクが高まる国指定の難病「色素性乾皮症(XP)A群」であると診断された。

 病型により症状は様々あるが、天候にかかわらず日中は紫外線を避け、命を守るために全身を覆わなければならない。一般的には屋内でも窓を避けて日陰で生活し、屋外で肌を露出できるのは、日没以降の時間帯のみだ。

 症状はやけどだけではない。

 一般的には、3歳ごろから難聴が始まり、6歳ごろには神経症状が出て身体機能の低下が始まるという。15歳ごろには車いすや歩行器の助けが無くては移動ができず、20歳ごろまでには徐々に寝たきりの状態に向かう。次第に嚥下(えんげ)や呼吸も難しくなり、胃ろう気管切開で延命をしても30歳まで生きるのがやっとだという。

 最初は現実を受け入れられず失意のただ中にあったという海陽君の父・篤司さん(39)と母・真夕さん(35)。でも、海陽君のためにも病気を受け入れ、治療の道を探りながら前を向いて生きていこう、そう心に決めてXPに関する情報を集めるためのインスタグラムを開設した。

 インスタグラムには、海陽君が家族と一緒に過ごす様子や普段の生活など、これまでに160件を超える写真と動画を投稿し、約2万1千人のフォロワーが集まった。同じXPの患者家族とのつながりもでき、病気との付き合い方も学んだ。見よう見まねだったが、篤司さんは建設中だった自宅の窓や中庭の屋根、車を覆う紫外線カットのフィルムを調達し、真夕さんは防護服を手縫いした。

 いまだに治療法は見つかっていない。だが、「この病気について、このまま発信し続けていれば、いつか奇跡が起こるような気がする」。真夕さんはそう信じている。(金居達朗)

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