第76回カンヌ国際映画祭(16~27日)コンペティション部門で、日本作品が二つの栄誉に輝いた。ビム・ベンダースを監督に招いた「パーフェクト・デイズ」(日本公開時期は未定)で主演の役所広司が男優賞、是枝裕和監督「怪物」(6月2日公開)で坂元裕二が脚本賞。この2作、「やさしい日本」の光と影と言えそうだ。
「日本の映画はどうして善人ばかり出るのか?」
今年のカンヌで、ある日本人記者がそう尋ねられたという。確かにコンペを見渡すと卑劣漢、暴君、エゴイストらが我が物顔で振る舞い、強烈な印象を残す。
「パーフェクト・デイズ」の主人公・平山は質素な暮らしを愛する独り身のトイレ清掃員。便器を磨き、木漏れ日の写真を撮り、銭湯で疲れを取り、文庫本を読んで眠りにつく。極端に無口だが人嫌いではなく、いい加減な後輩や迷子にもやさしい。
「私の好きな人たちや小津安二郎映画の笠智衆さんから作り上げた」とベンダース。「平山は謙虚な男。日本人全部がそうではないが、謙虚さは日本の伝統に根付いたものだと思う」
ただ、運転手付きの車に乗る…