島の元校長先生がおもてなし、退職金をつぎ込んだ小さな店の大きな夢

有料記事

榊原織和
[PR]

 島根県の隠岐諸島の人気観光スポット「ローソク島」を巡る遊覧船の発着所に、小さな売店がある。その名も「ローソクん」。店頭に立つのは小学校の元校長。諸島の未来を思い、一念発起して店を立ち上げ、観光客に心を込めたおもてなしをしている。

 ローソク島は、隠岐諸島最大の島である島後(どうご)(隠岐の島町)の北西沖に位置する、ろうそくのような形をした奇岩だ。海面から約20メートルの高さがあり、先端に夕日が重なると、まるで火をともしたように見える。隠岐の島町観光協会は、3~11月の夕日が沈む時間帯、島後の断崖とローソク島を巡る遊覧船を運航している。

 売店は遊覧船乗り場の待合所の一角にある。商品の受け渡しをするカウンター、商品を並べた棚があるだけのわずか2坪ほど。それでも、ジュースやたこ焼きなどの軽食、隠岐の土産が並ぶ。品ぞろえはコンビニエンスストアには遠く及ばないが、乗り場周囲には他に店がなく、観光客にとってはうれしい存在だ。

 そして店の売りは、30種ほどもあるローソク島のオリジナルグッズだ。夕日のともったローソク島のイラストが描かれたキーホルダーや木製プレート、店のマスコットキャラのステッカーなど。ローソクんが開店するまで、ローソク島の土産はほとんどなかったという。

 店主は、隠岐の島町の小学校の校長だった中西和志さん(63)。大学を卒業して37年間、ずっと隠岐諸島の町村で教員を務めた。

ローソクんを開いた理由とは

 教員時代に常々考えていたこ…

この記事は有料記事です。残り496文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

  • commentatorHeader
    藤田直央
    (朝日新聞編集委員=政治、外交、憲法)
    2023年6月3日15時23分 投稿
    【視点】

    写真を見て「あ、ローソク岩」と思い記事をクリックしたら、やはり隠岐の話でした。隠岐諸島の島後、懐かしいです。私は4年前、境港からフェリーで4時間かけて行きました。取材がタイトで残念ながらローソク岩は見られませんでしたが、美しい自然と人々の暮

    …続きを読む