書店員の大内学さん(44)は3月21日、妻と一緒に映画を見に出かけた。
映画「シン・仮面ライダー」の世界から現実に戻り、オフにしていた携帯電話の電源を入れた。十数件の着信履歴があった。休みの日なのに、会社関係ばかりだ。
「仕事でミスをしてしまったかな」。おそるおそる、同僚に電話をかけ直した。
「ツイッターを見なさいよ」
同僚はあきれた口調で、電話を切った。
ツイッターを開くと、人文書が話題になっていた。大内さんの情熱で販売にこぎ着けた本だ。
ここから、埋もれていた本が、破竹の勢いで売れていくことになる。
「この本を、この手で売りたい」
大内さんは、鉄道やアイドル、占いなど趣味の本を数多く取りそろえる東京・神保町の書店「書泉グランデ」で働き、定期的にイベントを開くことを任されている。
昨年1月には、ヨーロッパの騎士文化をテーマにイベントを企画した。本を売ることにはこだわらず、催事場にウクライナ製の西洋甲冑(かっちゅう)を商品として並べた。来店者の目を引き、関連本が次々に売れた。
次回3月に開くイベントの目玉を何にするか。どうしたら、店に来て楽しいと思ってもらえるだろうか――。
思い出したのが、ある本のことだ。
「中世への旅 騎士と城」(…
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