池に溺れた男児、会社員2人が救助 飛び込み→引き上げの連携プレー

伊藤未来
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 5月11日夕方、建設会社で働く遠藤龍輝さん(22)=福岡市城南区=と同僚の右松蒼汰さん(19)=同市博多区=は、糸島市役所の新庁舎建設の仕事を終え、近くの丸田池公園を歩いて駐車場へ向かっていた。

 公園には大きな池があり、小学3年の男児(8)が岸辺に積まれた石垣の上にいた。男児はしゃがみこみ、身を乗り出すようにして池を棒でつつき、魚を捕ろうとしていた。

 右松さんが池にかかる橋を渡っているときだった。男児が足を滑らせて池に落ちた。そのまま20秒ほど沈んでいたように記憶している。その後、水をかきながら顔を水面から出した。

 右松さんはすぐに近くまで駆け寄り、作業服のまま迷わず飛び込んだ。身長は169センチ。それでも水底に足がつかなかった。泳いで男児に近づき、後ろから抱きかかえた。水難救助を経験した父親に「抱きつかれると水中では動きづらくなる」と教わったからだ。しかし、男児は体の向きを変えて抱きついてきた。

 岸辺まで約3メートル……。

 男児を抱えたまま立ち泳ぎで進む右松さんを、遠藤さんは岸から冷静に見守っていた。2人が近づくと、身を乗り出して手を伸ばし、しがみついてきた男児を引き上げた。「ごめんなさい」。男児は何度も謝ったという。

 翌日、男児が母親と一緒に2人を訪ねてきた。お礼を述べた男児は、「大切なものをあげる」。そう言って人気漫画「呪術廻戦」のバッジを遠藤さんに差し出した。右松さんには「死ぬかと思った」と当時を振り返り、韓国のアイドルグループBTSのマスコットキャラクターのシールを手渡した。

 26日、糸島署で2人に感謝状が贈呈された。右松さんは「遠藤さんがいなかったら助からなかったかもしれない」と振り返った。2人の連係が功を奏した救助劇だった。(伊藤未来)

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