なぜ国民は財政再建を嫌うのか 学者・国民調査で浮かぶ「すれ違い」

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聞き手 編集委員・原真人
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 なぜ日本は世界で最も財政悪化が激しい国になってしまったのか。それなのになぜ、財政再建は政治テーマにならないのか。

 いっこうに解決に向かわない財政問題について東京財団政策研究所が昨年11~12月に、国内の経済学者(対象727人、回答282人)と一般国民(ネット調査、回答1千人)の双方を対象に意識調査を実施した。

 そこで浮かび上がったのは、学者も一般国民も財政赤字への危機感を共有しているものの、解決方法について考え方に開きがあるということだ。調査の責任者の一人、佐藤主光(もとひろ)・一橋大教授に調査結果を読み解いてもらった。

 ――なぜ経済学者と国民への財政アンケートを実施したのですか。

 「財政再建をしようという国民的合意はなぜできないのか、という問題意識からです。これだけ財政状態が悪く、これからも財政支出が求められているのに、さすがに財政再建をしないなんていう選択肢はありません。でも実際、国民はどう思っているのか。TPP(環太平洋経済連携協定)通商交渉がそうだったのですが、専門家の間で意見が分かれていると、国民としてもどちらを信じたらいいかわからない。本当はどうなのか調べてみようと考えました。財政学者だけに聞いたら結論は(財政再建が必要という答えになると)わかっているので、対象を経済学者全体に広げ、国際評価基準で国内トップ25%の大学の経済学者を対象に調査を実施しました」

 ――財政についての危機意識はどうでしたか。

 「財政赤字が問題だと答えた学者は87%いましたが、国民でも66%と多数派でした。このまま国の借金が増加の一途をたどったら何が起きるか、との問いでも学者も国民も最多回答は『増税や歳出カットなど厳しい財政再建を強いられる』という選択肢でした。危機意識は学者はもちろん、国民にも共通していることが確認できました」

 ――意識が異なる回答もあっ…

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    加谷珪一
    (経済評論家)
    2023年6月5日10時23分 投稿
    【解説】

    政府の支出にムダがあるのは確かであり、その是正は必須だと思いますが、残念なことに社会保障費の増大と比較するとケタが違うというのが現実です。  日本人の死因トップはガンですし、心疾患、脳血管疾患も上位ですが、これらの病気には高額な医療費

    …続きを読む