藤井聡太新名人、強気に危険地帯へ 長考72分で見通していた安全度

有料記事

村瀬信也
[PR]

 第81期将棋名人戦七番勝負(朝日新聞社、毎日新聞社主催、大和証券グループ協賛)の第5局が5月31日と6月1日に長野県高山村の「藤井荘」で指され、藤井聡太新名人(20)=竜王・王位・叡王・棋王・王将・棋聖と合わせ七冠=が大勝負を制し、通算4勝1敗で史上最年少での名人獲得を果たした。1日目から渡辺明名人(39)のペースで進んでいたが、藤井新名人が勝負手で流れを引き寄せた。渡辺名人の誤算はどこにあったのか。勝利を目前にした藤井新名人は何を考えていたのか。

 感想戦がお開きになり、上座に座る渡辺名人が将棋盤の上の駒をてきぱきと片付けていく。タイトルを失った棋士の最後の務めだ。身支度を整えた渡辺名人は、足早に対局室を後にした。

 聞きたいことがあった。藤井新名人が自ら「勝負手」と表現した△6六角(図1)の局面での読みの内容だ。渡辺名人は1時間26分の大長考を強いられたこの局面について、対局直後に「間違えてしまった」と話していた。次の▲2三桂を指すまでに、どんな心の動きがあったのか。

 廊下を歩く渡辺名人に言葉を選びながら疑問をぶつける。

藤井聡太新名人が放った勝負手。長考した渡辺明名人。新名人誕生の盤上で起きたこととは。将棋担当の村瀬信也記者が終局後、対局者らに取材しました。

 普段はこちらの質問にハキハ…

この記事は有料記事です。残り1265文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【10/25まで】すべての有料記事が読み放題!秋トクキャンペーン実施中!詳しくはこちら

  • commentatorHeader
    村瀬信也
    (朝日新聞記者=文化、将棋)
    2023年6月3日23時57分 投稿
    【視点】

    大一番で勝利が目前となった時、棋士はどんな心境に至るのか――。2020年、渡辺明名人は名人を初めて獲得した際、こう話していました。  「普段なら2、3回読んでから指して、『それでダメならしょうがない』と思える。でも、タイトル獲得がかかるこ

    …続きを読む