第81期将棋名人戦七番勝負(朝日新聞社、毎日新聞社主催、大和証券グループ協賛)の第5局が5月31日と6月1日に長野県高山村の「藤井荘」で指され、藤井聡太新名人(20)=竜王・王位・叡王・棋王・王将・棋聖と合わせ七冠=が大勝負を制し、通算4勝1敗で史上最年少での名人獲得を果たした。1日目から渡辺明名人(39)のペースで進んでいたが、藤井新名人が勝負手で流れを引き寄せた。渡辺名人の誤算はどこにあったのか。勝利を目前にした藤井新名人は何を考えていたのか。
感想戦がお開きになり、上座に座る渡辺名人が将棋盤の上の駒をてきぱきと片付けていく。タイトルを失った棋士の最後の務めだ。身支度を整えた渡辺名人は、足早に対局室を後にした。
聞きたいことがあった。藤井新名人が自ら「勝負手」と表現した△6六角(図1)の局面での読みの内容だ。渡辺名人は1時間26分の大長考を強いられたこの局面について、対局直後に「間違えてしまった」と話していた。次の▲2三桂を指すまでに、どんな心の動きがあったのか。
廊下を歩く渡辺名人に言葉を選びながら疑問をぶつける。
藤井聡太新名人が放った勝負手。長考した渡辺明名人。新名人誕生の盤上で起きたこととは。将棋担当の村瀬信也記者が終局後、対局者らに取材しました。
普段はこちらの質問にハキハ…
- 【視点】
大一番で勝利が目前となった時、棋士はどんな心境に至るのか――。2020年、渡辺明名人は名人を初めて獲得した際、こう話していました。 「普段なら2、3回読んでから指して、『それでダメならしょうがない』と思える。でも、タイトル獲得がかかるこ
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