核のごみの方針ただす質問に「恐喝」と答弁 対馬市長、3月議会で
原発の使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場の誘致をめぐり、調査を求める動きがある長崎県対馬市の比田勝(ひたかつ)尚喜市長が3月市議会で、誘致に反対する議員から方針をただされ、「恐喝」などと発言していた。議会は5月31日、「不穏当な発言」として議事録から削除したうえで公開した。
公開された議事録や市議会事務局などによると、発言があったのは3月6日の一般質問。誘致に反対する脇本啓喜市議は、市長が2020年の市長選で「誘致しない」と発言したことなどに触れ、パネルを使って「今も変わらないか」と答弁を求めた。市長は「市としては、誘致に向けた動きは何ら行っていない」と答えた。
ただ、現在の考えについては「市民が分断をしないことを一番心配している。個人的見解は控える」などとして明言しなかった。
市議がさらに、ダムや干拓の事業を例に挙げて、住民が反対の声を上げても、行政が決めれば事業は強行されると主張。市長に改めて、誘致しない考えなのかを問いただした。
これに対し、市長は「誘致をしないという公約をした、演説でしたということは事実」と認めた上で、「議員の考えに誘導するような考えじゃないか。悪い言葉で言えば、これ一つの恐喝ではないか」と発言した。このやりとりは地元ケーブルテレビで中継された。
議会側は市長の発言を問題視。議長が「社会常識に照らしてふさわしくない」と判断し、ネットで公開された議事録には「○○」と差し替えた。テレビ中継の再放送も、議会の要請で、発言部分は音声なしとなったという。
比田勝市長は発言について、朝日新聞の取材に「個別の質問には応じられない」と市総務課を通してコメントした。
比田勝市長は20年3月の市長選で、最終処分場誘致を掲げた候補との一騎打ちを制し、再選した。同市では現在、処分場誘致をめざす動きが表面化し、市商工会や建設業の団体などが調査の応募を求める請願を市議会に提出する方針を決めた。6月に始まる議会で議論される見通しで、市の対応も注目される。(小川裕介)
有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。
【10/25まで】すべての有料記事が読み放題!秋トクキャンペーン実施中!詳しくはこちら