第6回「美爆音」習志野出身の音楽家に聞く 120%注いだ野球応援の喜び
「若手音楽家の登竜門」と数えられる日本音楽コンクールで昨年1位に輝いたオーボエ奏者の榎かぐやさん(23)は、千葉県習志野市の市立習志野高校(習高)吹奏楽部の出身だ。そんな音楽一筋の榎さんは「高校3年間があそこまで充実していたのは、野球応援のおかげ」とまで語る。習高は11日に阪神甲子園球場で開かれる「甲子園ブラスバンドフェスティバル2023」に出場する。スタンド席から、青空のもと白球を追う球児たちにエールを届ける魅力は何か。榎さんに聞いた。
えのき・かぐや 2000年、千葉県出身。中学吹奏楽部でオーボエを始める。東京音楽大学卒業後、第91回日本音楽コンクールのオーボエ部門で第1位を受賞。現在はフリーで活動する。
連載 アルプスの夏音
「夏の甲子園」に欠かせないアルプススタンドの音色。吹奏楽部員の思いは、逆転劇を彩る「あの曲」にまつわる秘話は。「甲子園ブラスバンドフェスティバル」(6月11日)の出場校に聞きました。
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習高吹奏楽部には毎年、「野球の応援がしたい」と入部する部員がいます。でも、私は、習高が全日本吹奏楽コンクールで輝かしい実績を残していることもあり、音楽大学に進学するためのステップとして、音楽を勉強したくて入りました。
もともと野球自体に興味はありませんでした。「ホームベースってなに?」「ヒットってなに?」。それぐらい、知識はありませんでした。正直に言うと、野球の応援は最初、苦手で嫌いでした。
打者交代や試合の流れに合わせ、ボードを掲げて曲の指示を出すのが1年生の役割です。私は当時、試合の展開の理解があやふやなまま指示を出してしまいました。すると、先輩から「間違ってるよ!」と怒られることも少なくありませんでした。
普段は優しく丁寧に接してくれる先輩たちなのに……。なぜか、野球応援の場になると、指示が厳しくなるんです。
試合の動画を見たり、野球部員のクラスメートにルールの説明を聞いたりして勉強したけれど、慣れるまで時間がかかりました。「何でこんなことをやっているんだろう……」と思うこともありました。
応援する側のはずの野球応援。にもかかわらず、球場では吹奏楽部が励まされる場面もありました。
けど、気づいたら私も「先輩…
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