強制不妊手術「わけのわからないうちに」 北海道の男性が提訴
旧優生保護法(1948~96年、旧法)の下で不妊手術を強いられたのは違法だとして、北海道内の男性(83)が2日、国に3300万円の損害賠償を求める訴訟を札幌地裁に起こした。男性の親族が昨年12月の日本弁護士連合会主催の相談会に電話をしたことがきっかけで提訴に至った。
同種訴訟はこれまでに全国12の地裁・支部で起こされ、道内では3件目。旧法廃止から27年。差別や偏見を恐れたり、自分が旧法に基づいて手術を受けたと気づいていなかったりするケースが非常に多いという重い現実を突きつけている。
訴状などによると、男性は18歳ごろの58(昭和33)年、生活保護法に基づく岩見沢市の救護施設に入所した。施設は主に知的障害者を受け入れていたが、障害がない男性は職業訓練を受けられると考えて入った。
60年ごろ、施設職員に市内の病院に連れて行かれ、不妊手術を受けさせられた。手術の理由について説明はなかったという。
提訴に向けて今年4月に医師の診察を受け、男性の陰部には約1センチの手術の痕が2カ所あり、当時の不妊手術方法によるものだと推定された。
原告男性は記者会見で「わけのわからないうちに連れて行かれて(手術を)やられた。自分でもどうしていいかわからなかった」と振り返った。弁護団によると、男性は手術を理由に縁談を断られたこともあったという。
国の統計によると、旧法による強制不妊手術を受けたのは、全国で少なくとも1万6475人。このうち北海道は2593人で、都道府県別で最も多い。
原告男性は「私が表に出ることで、他の被害者の後押しになればと思い提訴を決意した」と語った。
全国弁護団は5日、全国電話相談会を開く。原告代理人の小野寺信勝弁護士は「被害の規模を考えれば、被害を訴えた人はまだまだ少ない。本人以外でも、何か知っている人がいれば連絡してほしい」と話す。相談は午前10時~午後7時、011・280・2296で受け付ける。(石垣明真)
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