明大みんなの夢 投手兼マネジャーあきらめなかったアキラの19球
ミットに収まったツーシームは120キロ台前半だった。それでも主審のストライクコールに、明大側の応援スタンドがどっとわく。100人近くの野球部員が、前のめりになって声を上げた。
「アキラいいぞー!」
5月21日、前週に東京六大学リーグの優勝を決めていた明大が、全校から勝ち点を得る完全優勝を懸けて臨んだ立大戦だった。
八回でリードは5点。リーグ戦で登板のなかった投手が起用された。
昨秋からマネジャーを兼任する石田朗投手(4年・明大明治)だ。「マネジャーが登板するのは見たことがない」とある年配のOB。
なぜ、この局面でマウンドに送られたのか――。
「努力が報われるのは、そうあることじゃない」。石田の野球人生は、小学1年から始まった。ほとんど投手一筋だった。
大学3年秋、コーチに告げられた予想外の言葉
神宮への憧れが強まったのは、明大明治中の3年のとき。当時、明大の絶対的エースだった柳裕也(現中日)が、指導しに来てくれた。強さと優しさを備えた「オーラ」を感じた。
高校最後の夏は3回戦で敗退。完投できなかった悔しさから、大学でのリベンジを誓った。
全国から甲子園の猛者が集まる明大のレベルは知っていた。練習のキャッチボールから球質の違いを感じ、「すごいところ来ちゃったな……」とあっけにとられた。
「野球人として、どこまで通用するか」。小さい頃から負けず嫌いだった。主力の先輩投手や「雲の上」の同級生に教えをこうた。身長170センチの体をめいっぱい使う。球速でかなわないならばと、ツーシームで芯を外す投球術を磨いた。
試行錯誤を続けていた大学3…
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